今、巷で話題のマインドフルネス瞑想法。
あのヤフーやグーグル、インテル、フォードなどの一流企業が、仕事の効率を上げるために採用している瞑想法です。
瞑想の起源は約4000年前。
瞑想は古代インダス文明で生まれた人類最古の健康法です。
現代の医療現場では不安症やうつ病、パニック障害などのストレス性疾患の他、認知症や慢性痛などへの対処法としても利用されています。
今回は、様々な研究により次第に明らかにされてきたマインドフルネス瞑想が、私たちの身体に及ぼす効果についてみていきましょう。
マインドフルネスが脳に及ぼす効果
カーネギーメロン大学のデイビッド・クレスウェル准教授は、マインドフルネスを使ったある研究を行いました。
マインドフルネス未経験の35人の被験者を2つのグループに分け、3日間の合宿をさせます。
1つのグループは、ガイドとなる音声を聞きながら5分間のマインドフルネスをさせ、マインドフルネスを意識しながらの体操や散歩を行ないました。(これをAグループとします)
もう1つのグループは、マインドフルネスは行わず、リラックスした状態でただの体操や散歩を行いました。(これをBグループとします)
3日間の合宿が終わって2週間後、脳に大きな違いが現れました。
マインドフルネスを行なわなかったBグループでは、前頭葉の一部にある「dlPFC」の活動が落ちていて、脳の一部が同期して活動していました。
「dlPFC」とは、思考や認知など知的活動のまとめ役を担う部分で、大脳全体の司令塔とも言われています。
脳の一部が同期している状態というのは、何も活動していない状態の時に現れ、車のアイドリングに例えられます。
この状態を「デフォルトモードネットワーク」と言います。
この時、脳の中ではさまざまな雑念が浮かび、それがストレスを生み出しています。
一方、マインドフルネスを行ったAグループでは、デフォルトモードネットワークと一緒に、dlFPCが活動していました。
dlFPCが働くことで、デフォルトモードネットワークをうまくコントロールし、その結果、ストレスを感じにくい脳になります。
日常生活の半分ほどは、目の前のこと以外のことを考えていて、雑念に取り込まれているような状態です。
人間は一日に187,000項目を考えていると言われていて、そのほとんどが過去の後悔や将来の不安で占められています。
マインドフルネス瞑想は、私たちが雑念に飲み込まれている状態から外に出やすくしてくれます。
まずは、瞑想を通して今いろいろ考えていることに「気づく」ことが大切です。
マインドフルネスで脳の構造自体が変わる
ハーバード大学のサラ・ラザー准教授はマインドフルネスの世界的な研究者です。
彼女は、一日45分のマインドフルネスを8週間行った人の脳が、どのように変わったのかを調べました。
その結果、被験者の海馬が増え、扁桃体が減少しているのがわかりました。
海馬とは記憶や感情のコントロールに関わる部分で、ストレスを受けると減少し、うつ病などにつながる可能性が指摘されています。
研究では、この海馬の一部である灰白質が5%ほど増えていることが確認されました。
これは新しい能力を身に着ける時の脳の変化に匹敵します。
扁桃体というのは、不安や恐怖などのストレスに反応する部分です。
(参考)
>>うつ病の原因は扁桃体にあった~恐怖による暴走とストレスホルモンの関係
実験の結果、扁桃体は5%ほど減少していました。
これは、ストレスに対する過剰な反応が抑えられることを意味しています。
うつ病患者さんは、海馬の働きが落ちていて扁桃体の働きが高まっています。
マインドフルネスを行なうことで逆の作用が起こりますので、うつ病にも効果が認められています。
以前は年をとると脳細胞は増えないとされていましたが、2004年に「中高年になっても脳は使うことによって変わっていく」と報告されています。これを脳の可塑性といいます。
つまり、マインドフルネスを行うことで、高齢者でも脳の構造自体を変えることができるのです。
マインドフルネスによる遺伝子の活動の変化
マインドフルネス研究の大御所と言われているリチャード・デビッドソン教授(ウィスコンシン大学)は、たった一日マインドフルネスを行なうだけで、遺伝子の活動が変化することを発見しました。
変化が現れたのは「RIPK2」という遺伝子です。
マインドフルネスをしなかった人はあまり変化がありませんでしたが、マインドフルネスを行なった人は、RIPK2の活動が劇的に下がっていました。
RIPK2は慢性の炎症にかかわっている遺伝子です。
たとえば、肥満や老化、ガンなどにかかっている状態では、弱い炎症がずっと続いています。
これが動脈硬化の原因となり、さらに病気や老化を悪化させてしまいます。
マインドフルネスを行なうことでRIPK2の活動を抑制し、老化や肥満に関わる動脈硬化などの進みが遅くなる可能性も期待されています。
最後に
マインドフルネス瞑想が私たちの身体に及ぼす影響についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
実際にマインドフルネスを行うことで、前頭葉の一部にある「dlPFC」の活動が高まり、海馬や扁桃体の体積が変化し、さらには遺伝子にまで変化が見られました。
このブログでも何度もお伝えしているように、とらえどころのない「心」を変化させようとするのは難しいため、ある程度仕組みがわかっている「体」から変化を促すことが、効果的かつ効率良く、うつ病を克服できると考えています。
そういう意味で、マインドフルネス瞑想も「体から治す」という考え方に合っている方法だと考えています。
(参考)
>>うつ病 薬を使わない治療法~「体から治す」という考え方
瞑想の正しいやり方についてはこちらの記事で詳しく書いていますので、ぜひご覧になってみてください。
>>幸せになりたい人必見!執着心を捨てるたった1つの簡単な瞑想法
当ブログ推奨教材の「プチ認知療法」でも、エクササイズの一つとして簡単に実践できる瞑想法を扱っています。
私が自腹で購入した感想などをレビュー記事で書いています。詳しくはこちらをご覧ください。
>>プチ認知療法の本音レビュー
私の体験談が何かの役に立つかもしれません。
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