私がうつ病を治す上で重視しているのは、
「体から治す」という考え方です。
うつ病というのは「心」にダメージを受けて
発症する病気だと考えている方も多いようですが、
実際に「心」というものは存在するのでしょうか?
嬉しい、悲しい、寂しい、楽しい、腹が立つ、
などの感情は心で生じているわけではありません。
刺激を受けると「脳」の電気信号や神経伝達物質によって
情報が伝達されることにより感情が生じます。
つまり、感情は「心」ではなく、
「脳」の働きによって生じるということです。
危機感・恐怖感と脳の前頭葉の関係
わかりやすい実例でお話しましょう。
交通事故で「危機感」や「恐怖感」を感じる
前頭葉の一部にダメージを受けてしまった人達がいます。
彼らは危機感や恐怖感を全く感じないので、
以前よりも幸せそうに見えますし、彼らも実際に
今のままの方が以前よりも幸せだと言っています。
しかし、恐怖感を感じないので通常の
日常生活を送ることができなくなりました。
どういうことかと言いますと、例えば料理ができなくなります。
包丁を扱っても恐怖感がないので、たとえば
野菜を切りながら、自分の手まで切ってしまうのです。
人は危機感や恐怖感を感じることで、
その時の状況を鮮明に記憶に残そうとします。
危機感や恐怖感を感じるからこそ、
失敗したことを鮮明に記憶し、同じ状況に
なった時に失敗を避けようとするのです。
以上のように、前頭葉という脳の一部が
傷つくことによって、危機感や恐怖感などの
「感情」は、物理的に感じなくなります。
ここでは、危機感や恐怖感について述べましたが、
その他の感情でも同じことが言えます。
つまり、感情というものは脳で全て
生み出され、処理されていることがわかります。
うつ病による憂うつな感情なども同じように、
脳の機能が正常に働かなくなったために生じています。
「うつになるのは心が弱いからだ」
という精神論をよく耳にすることがあります。
しかし、いくら強い意志を持って
憂うつな感情を吹き飛ばそうとしても、
脳の機能を正常に戻すことはできません。
脳の機能を正常に戻すことができない限り、
憂うつな感情をなくすこともできません。
つまり、精神論でうつ病が治ることはないということです。
うつ病を治すには、ただ脳の機能を正常に戻しさえすれば良いのです。
薬を使わずに「体からうつを治す」という考え方
脳というのは、もちろん「体」の一部です。
ですから、うつ病を治すには「体(脳)」という側面から
治していくことが最も効果があると考えています。
たとえば、体内に取り入れる食事内容を変えることによって、
「脳内の神経伝達物質のアンバランスを修正し、うつ病を治す」
という食事療法も「体から治す」という考え方に基づいています。
また、自律神経を整えることで、原因不明の体の痛みやうつ症状を
解消しようとすることも「体から治す」という考え方によるものです。
それでは、SSRIなどの抗うつ薬は、
「体から治す」という方法ではないのでしょうか?
上記の考え方に基づくと、脳に作用するわけですから
「体から治す」方法だと言えます。
しかし、抗うつ薬の場合は、脳内伝達物質である
セロトニンやノルアドレナリンの量を減らさない、あるいは
増やすことによって、うつの症状を抑えようとするものです。
脳内伝達物質は、セロトニンやノルアドレナリン以外にも、
分かっているだけで50種類以上も存在します。
ただ単にセロトニンやノルアドレナリンの量を増やすだけでなく、
脳内伝達物質をお互いにスムーズに伝達しあえるように
しなければ脳の機能は改善されません。
たとえば、セロトニンを増やすことで安心感を得られたとしても、
それを受け取る側の神経細胞がきちんと機能していなければ、
一時的に症状が改善するだけで、根本的に改善したとは言えません。
このブログで取り上げている「体から治す」という考え方は、
脳内伝達物質のバランスを整えて、脳の機能全体を改善することで、
人間の持つ「自然治癒力」を活性化させることを目指しています。
そうでなければ、薬で一時的にうつ病が治ったと思っても、
何度も再発してしまうという危険から免れることができません。
実際にうつ病の再発率は60%と言われています。
「再発に関する報告では、うつ病の再発率は60%もあり、
その後再発を繰り返すとさらに再発率が高くなるとされています。」
(厚生労働省ホームページより抜粋)
私は決して抗うつ薬を否定しているわけではありません。
自殺の危険性を伴う重症のうつ病の場合などには、
積極的に抗うつ薬を処方し、たとえ一時的にであっても
気分を持ち上げる必要があると考えています。
しかし、長い目で見て根本的にうつ病を改善していくには、
薬を使わずに自然治癒力を高め「体から治す」治療法
を実践することが最も有効な方法だと考えています。
無理やり笑顔を作ると楽しく感じるメカニズム
憂うつな気分・感情を変えるのも「体」という側面から
アプローチすると、比較的簡単に行なうことができます。
これも、簡単な例でお話しましょう。
たとえば「無理やり笑顔を作ると楽しい気分になる」ということは、
色々な所で言われているので、あなたもご存知かもしれません。
これが本当なのかどうか、実際に脳科学者が実験してみたそうです。
ペンを縦にくわえる人と、横にくわえる人に被験者を分けます。
どちらの被験者にも同じ漫画の本を読んでもらい、
漫画の面白さに10点満点で点数をつけてもらうという実験です。
同じ漫画を読んでいるのに、縦にくわえた人達は平均4.7点、
横にくわえた人達は平均6.6点という結果になりました。
このことから、ペンを横にくわえ強制的に笑顔を作ることで
自分が見ているものが楽しく感じられるということがわかります。
そして、これを脳科学レベルでも検証しています。
強制的に笑顔になっている時には、脳の「報酬系」と
呼ばれる部位の血流が増加し、活性化していました。
脳の「報酬系」が活性化すると
快楽物質「ドーパミン」の分泌が促進されます。
つまり、快楽物質「ドーパミン」の神経回路が活動を始め、
「嬉しい・楽しい」などの感情が実際に湧いていたのです。
笑顔を作るという「体」の動きを取り入れるだけで、
比較的簡単に感情を変えることができることがわかります。
「行動」を通して考え方が変わっていく
ほかの例でいいますと、例えばあなたが
外出するのが怖いために、引きこもっているとします。
いきなり「外出して電車に乗って会社まで行きなさい」
と言っても無理な話です。
そこで「会社に行く」という行動を、
自分が抵抗を感じないレベルにまで細分化してみます。
たとえば、ドアを少しだけ開けて、
外の様子を伺うだけでしたらできるかもしれません。
それができたら、少しだけハードルを
上げて、次は一歩だけ外に出てみます。
「あぁ、意外と恐くないんだな…」
と感じられたらしめたものです。
このように段階を踏んで少しずつ慣らしていけば、
会社に行くこともできるようになるでしょう。
ここで大事なことは「体を使って行動すること」です。
行動してみることで、初めて
「あぁ、外に出てみれば意外と恐くないんだな…」
というように、考え方が変わっていきます。
ただ単に頭の中だけで想像しているだけでは、
恐怖が増していくばかりですが、体を使って行動する
ことで、初めて考え方は変わっていくのです。
これも、先ほどからお伝えしているように、
「体から治す」という考え方に基づいています。
「体から治す」という考え方に基づいた治療法
うつ病を「心の働き」と捉えてしまうと、
漠然としていて対処するのが難しくなります。
しかし「体の側面から心を治していく」
と考えると、比較的治すのが容易になります。
うつ病によく見られる「マイナス思考」や
「原因不明の体の不調」などの症状も、「体」という
側面から治していくことで、効率よく改善することができます。
私が「うつ病は体から治す」という考え方を
重視しているのは以上のような理由からです。
当ブログでは、この「体から治す」という考え方に
基づいた治療法を主にご紹介しています。
どの治療法(教材)を選ぶのかは、
あなたの性質や現在置かれている状況、
そして病気の症状によって変える必要があります。
あなたに合った最適な治療法(教材)の
選び方は、こちらの記事をご覧ください。
私の体験談が何かの役に立つかもしれません。
良かったらご覧ください。
by たま
こんばんは!
僕も体から治すという考えに自分自身の経験からも激しく共感です。僕の場合は姿勢と呼吸でしたが。
一時的にですが、ネットで調べた色々なテクが上手くできたのか、姿勢と呼吸を変えただけで不安も消し飛び何事にも動じないような精神状態をつくることができました。
やじろべぇさんはウツを克服するうえで姿勢と呼吸に関して何かお考えをお持ちでしょうか??あるようでしたら
教えてください!よろしくお願いします
2016年9月22日 10:24 PM
by やじろべぇ
たまさん、コメントありがとうございます。
姿勢と呼吸で良くなられたのですね。
姿勢と呼吸も「体から治す」方法に
含まれると思いますので、
効果はあると考えています。
姿勢に関しては、ブログで推奨している
「2ヶ月間うつ病改善プログラム」でも
取り上げられています。
呼吸に関しては、自律訓練法などもありますし、
精神に良い作用を起こすのに効果的だと感じています。
呼吸は意識的にも無意識的にも行なえる動作ですので、
潜在意識をコントロールする手段として
かなり有効な方法だと考えています。
2016年9月24日 9:33 AM