今回は、ストレスがうつ病など心の病気に及ぼす影響について見て行きます。
その前にもう一度、ストレス反応のおさらいです。
私たちが日常で、様々なストレスを感じると、恐怖や不安に反応する脳の扁桃体が活動し始め、扁桃体から副腎にストレスホルモンを分泌するよう信号を出します。
ストレスホルモンが体内に分泌されると、
1. 心拍数を増やす
2. 血液を固まりやすくする
3. 血管を締め上げ、血圧を上昇させる
という「ストレス反応」が起こります。
ここまでは、前回までの記事でお伝えしました。
>>ストレスが身体に及ぼす影響
>>ストレスが「突然死」や「癌」の原因に?!
>>ストレスと環境の変化の関係~ライフイベントストレスチェック表
このストレスホルモンの一つ、コルチゾールが一定の量を超えて増え続けると、記憶や感情に関わる、脳の「海馬」を破壊することがわかってきました。
うつ病の人と健常者の脳を比べてみると、うつ病の人の海馬が委縮し、スキマができていることから、海馬の損傷がうつ病につながる可能性が指摘されています。
ストレスが心の病気を生み出すようになった2つの理由
ストレスの質と数が変化してきた
もともとは、天敵に遭遇した時に素早く体を動かすために発達してきたストレス反応が、なぜ心の病気につながるようになったのか、理由は2つあります。
1つは、昔と現在とではストレスの質と数が変化したことが挙げられます。
以前は、天敵に遭遇するなど、その場限りの一過性のストレスが主要なものでした。
しかし、天敵がいなくなった現代では、仕事上の様々なことや人間関係など、1つ1つのストレスは天敵に遭遇することほど大きなストレスではありませんが、解決するまでに時間がかかるものが多くなりました。
さらに、複数のストレス要因が重なることで、当初想定されていたストレスの許容量をオーバーするようになりました。
絶え間ないストレスにより、慢性的にストレスホルモンが過剰分泌されるようになり、脳を破壊するまでに至ってしまいました。
「記憶力」と「想像力」が心の病気を促進する
ストレスが心の病気を生み出すようになった2つ目の理由は、私たちが持っている「記憶力」と「想像力」の働きが関係しています。
たとえば、上司に厳しく叱責されるなどの強いストレス体験があると、その出来事が終わった後でも、「記憶力」によって繰り返し叱責された時のことを思い出し、嫌な気持ちを再現してしまいます。
そしてまた「想像力」によって、「明日も上司に叱られるのではないだろうか…」と、まだ起きてもいない未来について心配し、不安を感じ始めます。
このように、過去のことを思い悩んだり、未来についての不安を考えたりすることを、「マインド・ワンダリング」(こころの迷走)と言います。
2,250人を対象にした「マインド・ワンダリングに関する大規模な行動心理調査」が、ハーバード大学で実施されました。
この調査によると、目の前のことを考えている時間は生活時間の53%、目の前のことを考えていない時間は生活時間の47%という結果でした。
生活時間のうち約半分もの間、ストレスを感じやすい「マインド・ワンダリング」の状態に陥っていることがわかります。
あれこれ考えているマインド・ワンダリングの状態では、ストレス反応がずっと続くことで、心の病気へと発展してしまいやすくなります。
ストレスに強くなるには?
同じようなストレスを受けても、うつ病になる人もいれば、ならない人もいます。
これらの違いはどこにあるのでしょうか?
ストレスに強い人と弱い人の違いを知ることで、答えが見えてきます。
早稲田大学人間科学学術院の熊野宏昭教授によると、ストレスに強いか弱いかを分けてしまう原因には、以下の4つがあると言います。
①生まれ育った環境
②遺伝(体質)
③生活習慣
④考え方のクセ
ストレスに弱い原因が特定できるなら、その弱い部分を改善することで、ストレスに強くなることもできるはずです。
① 生まれ育った環境
「子どものころに強いストレスを受けた人の脳に、30年後どのような影響が現れるか」という研究がハーバード大学で行われました。
それによると、子どものころに強いストレスを受けた人ほど、扁桃体が大きいことがわかりました。
扁桃体が大きいと、小さなストレスにも反応しやすくなりますので、ストレスに弱くなります。
子どものころに、最も大きな影響を及ぼすのは、身近にいる両親です。
小さいころにどのような子育てをするかによって、大人になってからうつ病その他の心の病気になりやすくなるかどうかも変わってきます。
当ブログでは、うつ病や引きこもりになってしまう芽を、子どものうちに摘み取っておくために、伊藤幸弘氏の「不登校・ひきこもり解決DVD」で正しい子育てを行なうことを推奨しています。
②遺伝(体質)
どんな病気にも、かかりやすい人、かかりにくい人がいるように、体質的にストレスを感じやすい人もいます。
脳内には50種類以上もの脳内伝達物質があり、それらのバランスを整えることで、精神的な不安定さも改善していきます。
体の中から「うつになりにくい体質」「ストレスに強い体質」へと改善していく方法としては、「荒木式うつ病改善プログラム」という食事療法の実践が有効だと考えます。
③生活習慣
うつ病を改善したり、ストレスに強くなるために、最も基本的なことが「規則正しい生活習慣」を心がけることです。
大昔、我々の祖先が狩猟生活を行なっていたころは、うつ病などほとんどなかったと言われています。
朝、太陽が昇るとともに目を覚まし、日中は体を動かして活動し、夜は日が沈むとともに眠りにつく。
本来、人間の体を最も調子良く活動させるためには、このサイクルを正しく回すことが大切です。
これは、規則正しい生活とホルモンバランスの間に、深い関わりがあるためです。
規則正しい生活が崩れ、昼夜逆転の生活等をしていると、正常な時間帯に正常な量のホルモンが分泌されなくなるため、体や心に不調が現れます。
規則正しい生活を実践する時に大切なのが、朝起きて太陽の光を浴びることです。
自分で規則正しい生活リズムを作れない人は、光で起きる目覚まし時計を試してみることをお勧めします。
④考え方のクセ
カッとなってすぐ怒る人や、欲しくなったら手に入れるまで諦められないような人は、ストレスに弱い人と言えます。
逆に、ゆったりと構えて、自分の現在の状況に満足していられるような人は、ストレスに強い人と言えるのですが、そのように考え方のクセを変えるのは、なかなか難しいのも事実です。
考え方のクセを変えるには、自分がどのような時に強いストレスを感じるのかをしっかりと認識し、感情をコントロールするトレーニングを地道に積んでいくことが大切です。
当ブログでは、考え方のクセを変える教材として、「プチ認知療法」と「自己メンタルセラピー講座」を推奨しています。
両者の詳しい違いについては、こちらの記事をご覧ください。
>>プチ認知療法 vs 自己メンタルセラピー講座 どっちがいいの?
ストレスで心の病気にならないために
4回に分けて、ストレスが体と心に及ぼす影響についてお伝えしてきました。
複数のストレスが積み重なることで、ストレス反応が暴走し、癌や突然死、心の病などにつながることがわかりました。
これらの危険性を避けるためには、ストレス自体から遠ざかるのが一番良いのですが、現代社会に生きている以上、全くの一人で生きて行くのはほぼ不可能であるため、全てのストレスを避け続けるのもほぼ不可能だと言えるでしょう。
だとすれば、心や体の病気に陥る危険を避けるためには、今よりも少しストレスに強くなることが有効だと考えられます。
ストレスに強くなるには、
①ストレスに強い大人になるよう、できるだけ早いうちに正しい子育てをする
②食事療法で体の中からストレスに強い体質作りをする
③規則正しい生活習慣を心がける
④ストレスに強い考え方のクセを身につける
以上の4つを強化していくことが大切です。
お子さんがいらっしゃる場合には、①の正しい子育てを実践していきましょう。
正しい子育てを実践するのは、早ければ早いほど効果が大きいです。
現在、ストレスに弱いと感じている方は、②③④を強化していきましょう。
②③④の中では、個人的に③の「規則正しい生活習慣」は、うつ病を改善するには大前提だと考えています。
うつ病の人は、まず規則正しい生活習慣を第一に心がけてください。
②と④では、比較的簡単な「体質面からの改善」を先に行う方が効率的だと考えています。
うつ病を治すには、体質面から改善した方が効率的だという理由を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
私の体験談が何かの役に立つかもしれません。
良かったらご覧ください。